家族葬の体験談 30万円コースで請求総額94万円

家族葬のお金の話

昨年、父の13回忌の年に母が亡くなり、自分は2度目の喪主を務めることとなった。回復が難しい特定疾患だったこともあり、母は生前より自分の末期治療や死とその後のことについて、口頭あるいはエンディングノートを書いたりもしてある程度事前に希望を伝えていた。母の遺志により葬儀はごく限られた身内で家族葬として執り行った。

家族葬の体験談

この記事では自分が体験した家族葬のお金の話を書こうと思う。

前記事でスペース・オディティやグランブルーやデヴィッド・ボウイの死生観について触れたらブログに家族葬の広告が出る様になったのが少々心外で、思い立って自身や送る側の準備の参考になればと思いこの記事を書くことにした。

家族葬の準備

数年前より母は徐々に身体のあちこちが思う様に動かなくなる病気に罹っていて、身の回りのことすら不安を憶える様になっていたことなどもあったので、自宅介護を見込んで自分は仕事場を自宅に移したのだけれど、一昨年の春には妹の勤める介護型の病院に入院させてもらうこととなった。

入院中にも何度か発作を起こしてその病院から大手の病院に救急車で搬送されることなどもあった。病状は進行する一方で必要な栄養の摂取なども徐々に困難になっていき、先生から今後の病状の進行について大まかな説明を受けて、亡くなる半年ほど前から妹と相談して葬儀の準備なども進めることにした。

入院の前から母本人より家族葬にしたいという希望を聞いていたので、近くで家族葬が可能な葬儀場を何件か回ってパンフレットなどを見ながら検討していたのだけれど、母が入院する病院に勤める妹がその病院にもよく出入りしている業者が多少顔見知りでもあり、古くからテレビコマーシャルなども流していて知名度もあるのでということで、その業者で説明を聞いて会員となり前払いの費用を納めることにした。

家族葬のコース

家族葬のコースは参列者の人数や使用する祭壇や会場の大きさなどで20万円コース、30万円コース、40万円コースと分かれていて、それに加えて祭壇に飾る花の量などがオプションで設定されていた。母の遺志を尊重すれば最もシンプルなもので良いとの思いもあったが、妹の心情的な希望も聞いて中程の30万円のコースを選んで契約してお金を払った。

またこの時期には、お寺さんにも現状を伝えておいた。

母の死の当日

夜11時頃に妹から電話があって、病院から母の容態が急に悪化したと連絡があったので今から病院に来いとのことで、駆けつけたときには既に母は亡き人となっていた。病室からは既に移動した後で身の回りのものも既に段ボールに入れて別室に移されていて、長く母がいた場所にはまっさらに整えられたベッドがあるだけだった。他の入院患者のメンタルケアの意味もあろうと思うが「死」の痕跡は素早く跡形も無く消される様だった。夜中だったためか普段病院では見慣れない若い先生が死亡の診断書を書いてくれた。

聞いておいた葬儀屋の連絡先に電話をして、寝台車で葬儀場まで運んでもらった。葬儀場では仮の安置室の様なところに運ばれて枕元で線香を上げたが、妹とあれこれ話をする間もほとんど無いうちに隣室に呼ばれ、業者と葬儀の段取りなどを決める話し合いに入った。日程が決まるとひとつひとつの項目の様式を決定して、最後にその内容で見積書を書いて同意を求められるのだが、その時点で見積もりの請求総額は100万円を超えていた。

100万円の「30万円コース」

ひとつひとつの項目を決める際も母の遺志をなるべく尊重する形で余計なものは極力省いたつもりであったが、その見積もりの総額は100万円を超えるものだった。契約時、当日の引き出物や法要の際の食事などは別途料金が発生するということは聞いていて、大まかにではあるが出席者の香典などでほぼ相殺できる範囲かとイメージしていたのだが、担当者が手書きで記入するその見積書を覗いてその部分をざっと暗算してもせいぜい30万円ほどのものだ。それを指摘して「なぜ30万円コースに100万円かかるのか?」を問い正しても、雑多な項目のそれぞれの内容と料金とを示すのみでそれに対する明確な答えは得られず、家の仏壇に飾るための遺影とか引き出物の饅頭の数を1つ減らすとか細かい変更を提案し総額を少し減らして再提示された。これを2〜3度繰り返した。ごくやんわりとした慇懃な手法でではあるが、いつの間にか規定の料金を1円でも値切ろうとするクレーマーの様な立場に置かれた格好である。

家族葬のコースの案内

契約前に貰った「30万円コース」のパンフレット。一見、必要なものはすべてカバーされているのだろうとの印象を受ける。この時点でカバーされていない雑多な追加事項を逐一確認するのは難しい。

この時点で夜中の2時か3時、数時間前まで生きていた母の死をじっくりと受け入れる間もほとんど無いまま、夜が明けてから連絡しなければならない相手や自分の仕事の段取りの入れ替えなどを頭の中に並べつつ、100以上もある様な細かい項目のひとつひとつを手書きで記入する担当者の鉛筆の先を無言で見つめているのである。

結果的には、この「30万円コース」の30万円というのは、単に内金の額であったことに他ならない。

葬儀費用の他にかかったもの

上記はあくまでも葬儀屋に払った葬儀費用の話である。その他に、お寺さんへの当日のお礼と四十九日までの七日毎の法要のお礼(これは任意)、家族葬を説明した案内状、位牌などの仏具、当日出席した身内への香典返し(香典の額が大きかったので当日配った引き出物とは別にあらためてお返しした)、後は公的な手続きや銀行口座などの手続きに必要な謄本など、総額では30万円ほどになる。

家族葬の香典

以上、体験した家族葬のお金の話を書いたのだが、もうひとつ、一般的なものだった父の葬儀と比較しての大きな違いには香典がある。父の場合、自宅近くの葬儀場で普通の葬式をしたのだけれど、かかった費用が香典返しやお寺さんの分も含めて総額200万円くらいだったのに対して、いただいた香典の総額もちょうどそれと同じくらいだった。母の家族葬の場合、親戚も含め知り合いやご近所の方にも香典をお断りする案内を出していたし、(詳しくは知らないが)通常ある程度費用の相殺を調整する役目もあるのであろう親戚からの祭壇の「花」や「籠盛り」もしなかった。出席者とお断りしきれなかったごく近い親戚からの香典をいただいたくらいである。なので、家族葬の場合の葬儀費用は基本的にはまるまる自前と考えておいた方が良い。

葬式不要、戒名無用

その他、煩雑な事務的事柄や人との応対など、家族葬はそのイメージとはすこし違って喪主への負担は少なくない。沢庵坊や白須次郎の様にその生き様と死に様が一致して「葬式不要、戒名無用」というのならそれは良いが、上記の様な事柄も参考にしていただければこれ幸いである。

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