旨いコーヒーを飲みたくなることがある

学生の頃、長期の休みには自宅からバスで1時間ほどのリゾート地のホテルやペンションに住み込みでバイトに行くというのが常だった。いちばん最初は祖母が長い間住み込みで賄いの仕事をしていた伝でその界隈のいちばん奥まったところにあるホテルに行って、その後、民宿なども行ってみたりしながら最終的に落ち着いたのがペンションだったのだけれど、そのペンションのオーナーからは良い意味で色々影響を受けた。

コーヒーを飲む習慣もそのペンションで覚えたことのひとつで、その後には日常的なバイト先として喫茶店で働いたこともあったのだけれど、美味しいコーヒーを飲むという意味ではやっぱりペンションの経験が大きい。

その後社会人になってしばらくした頃、自宅の近くに自家焙煎の美味しい喫茶店が出来て、自宅に長期間住むことはなかったけれど自宅に用のあるときには必ずそこでコーヒーを飲む様になった。

そしてまた何年も経ってから、成り行きで今度は自分がカフェをやることになったのだけれど、どうせなら美味しいコーヒーを飲みたいという思いで、その自宅近くの喫茶店のマスターに自家焙煎を習って自分で豆を焼くようになった。

自家焙煎機

中古で買った焙煎機。4キロの直火のガス窯。火力と時間と排煙で豆の味がまったく変わる。

カフェの開店準備に当たってはまた別の大きな喫茶店の方からも色々お世話になることになって、たまたまその店でも自家焙煎で豆を焼いていたのだけれど、若いうちにある程度コーヒーの旨さの基準が出来ていたので、自分の焼きたい豆の味というのがけっこう絞られていて、それが出来るまでに生豆を何十キロもダメにしたのは若気の至りというやつで、下手に好みが出来てしまっているのは商売的にはひとつもメリットが無いということも学んだ。

ちなみに、自宅の近所の豆はやはり自分の理想に近いもので、自分的には旨いコーヒーなのだけれど、もうひとつの大きな喫茶店の方は大きな窯で機械的に焼いているだけ・・・実は豆を焼いているその喫茶店のオーナーはコーヒーが飲めない人で、たまに味見をすることはあってもその後すぐに水で口を濯いで紅茶を飲むという感じなのだけれど、ひと月のコーヒー豆の売り上げは自宅近くの旨いコーヒー屋さんの数十倍であった。旨いコーヒーと売れるコーヒーは違う。

悲しいことに自分は商売やプロモーションよりも自分が飲みたい豆を焼く方に熱中していたので、焼いて飲んでというルーチンを延々と繰り返したのだけれど、おかげでだいたい飲みたい味のコーヒー豆の焼き方というのは身に付いた。

コーヒードリップ

豆を焼いて淹れて飲むの繰り返し。

まぁ、こんなことがあったのだけれど、最近ではスーパーに売ってる市販の豆でコーヒーを淹れている。たまに気が向くと自宅近く(今は県外)のそのお店から豆を送ってもらったり、いろいろ飲み比べていたころにおいしかった店の豆を送ってもらったりすることもあるのだけれど、一度そんな経験をして、しかも無尽蔵に近い感じで自分の焼いた豆ばかりを飲んでいたのが祟って、子供の頃に飲んでいた山水と同様でどこを探しても無い味になってしまったのは悲しい。

まぁでもこんなものは記憶と味が結びついているだけで、どれがその味かなんていうのは本当は無いのかもしれないけれど。

カフェの内装やテーブル、カウンターなんかもやはり自分で作ったりして、予想通りというかやっぱり暇な店だったので置いてあったピアノを弾いて遊んでいたり、そんなところで飲む自分の焼いたコーヒーが旨かったというだけかもしれない。

カフェとピアノ

自宅で、簡単に至極のコーヒーを楽しむ方法

(追記)とはいうものの…

とは言うものの、基本的なところで手間をかけた分の最低限の味というのはある。

コーヒー豆の品質は品種やグレード云々を言い出すとキリがないけれど、鮮度と不純物を取り除く手間でずいぶん美味しくなる。たぶん普通に飲み比べて分かるレベルで。

コーヒーの生豆

生豆の仕入れ先選びは結構悩んであちこち試した。

生豆の不純物

生豆の段階で一度、不純物を取り除く。腐った豆や虫食いの豆・・・

コーヒー豆の不純物

生豆といっしょにけっこう色々なものが入っている。石とかトウモロコシとか。コインが入っていたこともあった。

コーヒー豆の不純物(焼き豆)

豆を焼いた後にもう一度不純物を取り除く。

コーヒー豆のハンドピック

不純物を取り除く作業はハンドピックなどと呼ばれる。なかなか手間がかかるけれど味が変わるので、やっている店ではやっている。

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